仕事の終わるころにメール
今からどうしても会いたい
ダメかな
一目顔を見たい
そんなことを言われたのは初めて
思えばイタリア人の恋愛表現は豊かだと聴いて
イタリアの男性と付き合ってみたいと
本気で思ったことがあったっけ
人間心から願ったものは
きっと何らかの形で叶うものなんだ
ちなみにわたしは
幼稚園の卒園アルバムに書いた職業に
気がつくとなれていた
厳密に言うと職業は少しだけ違うけど
ほぼ同じような内容のお仕事に
流れのなかで就いている
世の中はそういう風に出来ているらしい
ありがたい
そうだとすると
わたしは将来
Mと暮らすことになるのかもしれない
と半分本気で思っている
いや、半分だから無理かな
１週間後には豆腐懐石
タイムトリップしたような
純和風の掘炬燵で
湯葉を自分で掬っていただいたり
Mはずっとニヤニヤうれしそうに
食べる私を見つめている
ほんとうに、ずっと
それはちょっと内心引いてしまうほど
こんなに見つめられながら
食事をいただくのは初めて
この人大丈夫かな
このときは正直そう思っていた
個室から出ようとした瞬間
背中を向けて扉に向かうMが
ふいに振り返り
唇が触れるかすれないかの
中学生がしそうなぎこちないキス
そして
やっぱり照れたような満面の笑み
この頃は正直ご飯につられて
会っていたところがあったけど
この笑顔はもう好きだったのかも
地元から少しだけ離れた駅の改札で
待ち合わせ
満面の笑顔
居酒屋でも笑顔でしゃべり続け
帰りにうれしそうに手を繋いできた
あんまりうれしそうだから
わたしまでうれしくなったのを
覚えている
この笑顔にいつも安心を
もらっているということに
気付くのはもう少しあとのこと
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